保育日記

ほんとうに人間はいいものかしら

年明け後、2歳児H組に行って「12支のはじまり」の絵本を読んであげた（読ませてもらった）ことを書きましたが、その後、なかなか時間が取れず、どこのクラスにも絵本を読みに行くことができないままずいぶん時間が過ぎてしまっています。しかし、どうしても子どもたちに読んであげたいと思っているこの季節ならではの絵本を二冊机の引き出しの中にしまってあるのです。一冊は限定出版で重版の予定がないという「きこりとおおかみ」というフランス民話。もう一冊は誰もが幼い頃に読んでもらったことがあるであろう日本童話の名作の一つ「手袋を買いに」です。この二つのお話に共通するのはハラハラドキドキするというところ。幼稚園教諭として保育現場でこれまで何度も子どもたちに「手袋を買いに」を読んであげたり素話で語ってあげていますが、いつの時代のどの子どもたちも、小ぎつねが母ぎつねに「出してはいけない」と念を押されたにもかかわらず、間違ってきつねの手を出してしまう場面になると子どもたちはドキドキする感情が抑えきれなくなうようで、手で目を隠したり、目を閉じたり、隣に座っている友達と手を握り合ったりする姿が見られることでした。そして自分が幼かった時も同じ感情を抱いた記憶があります。それは、それだけ話の中に入り込んでいる（いた）ということの表れだったのでしょう。
　ところで、毎朝、電車を降り、大河原駅から保育園まで歩く約1㎞の道のりの中間地点くらいの場所にあるN公園辺りで時々卒園児のRちゃん（現在3年生）に会うのですが、Rちゃんとすれ違う時、「おはよう！いってらっしゃい」と声をかけタッチをしています。その際、手袋をしたままではなんとなく味気ないと思い、手袋を買いに行った子ぎつねとは違い、Rちゃんが正面から歩いてくることがわかった時点で右手だけ手袋を外しタッチの準備をし、前述のように挨拶をしながらタッチをしていたところ、いつの間にかRちゃんまでが同じように右手だけ手袋を外しタッチをしてくれるようになっていたのです。3年生にもなると恥ずかしさが芽生えているであろうRちゃんが、お友達や、姉のHちゃんと一緒であるにも関わらず全く恥ずかしがることなく担任でもなかった僕に笑顔で「おはよう！」と挨拶をし、タッチをしてくれることに喜びを感じます。「手袋を買いに」の最後のシーンで、子ぎつねは、間違えてきつねの手を出してしまったことを母ぎつねに話します。その時、母ぎつねは、「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやきます。一方、僕は園長として「ほんとうにいい保育環境を与えてあげられただろうか、子どもたちに最善を尽くしてあげられただろうか」と心の中でつぶやき考えてしまうのでした。

2017年01月19日（木） No.1982 (園長日記)

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