Diary

大切なこと


人間は自分の身体の大きさや、周囲の環境から、本来、椅子ではないものでも座れそうなモノを「椅子」として使うことがあります。また、「自分が乗っても、物を載せても壊れることなく安心な物体」があると、それを様々な用途に使います。「座る」「物を乗せる」などなど・・・。そのことを知覚心理学者のジェームズ・ギブソンは「与える・提供する」という意味の「afford」という動詞をもとに、物が持つ形や色、材質などが、その物自体の扱い方を説明しているという考え方「affordance」と言う言葉を作りました。当然のことながら我々の生活の中にも保育園の中にも無数の「affordance」があふれ、無意識のうちにその中で生活しています。園庭では出されていた日除け用のテントの下に5歳児の女の子たちがゴザやカップなどごっこ遊びをするために必要なものを運び込み、お家ごっこを始め、0歳児の保育室前のバルコニーでは5歳児のぞみ組のT君とS君が並べた椅子をロケットに見立て遊んでいました。このように、大人が「日除け」や単なる「椅子」として準備しても彼女・彼等は「家」や「ロケット」として認識して遊び始め、更に遊びを発展・展開させていくことができるのです。それは、前述のように、その形(デザイン)から使い方(情報)を発見できる、使い方の情報を発信しているということです。そのため園庭に落ちている枝や棒が子どもたちの格好の遊具となり銃になったり魔法の杖になったり・・・。僕自身がそんな子どもたちと同じ感覚のまま(ネオテニー)なので、妙な形の丸太や薪を見つけると園庭の遊具として使えないか考えてしまうのでしょう。
 さて、今日は気温だけでなく湿度も高くジメジメとした一日でした。それでも、1歳児そら組のK君は寂しさや不安を取り除くため、大切なぬいぐるみやふわふわのブランケットを抱えて過ごす姿が見られます。そして、担任のM先生はぬいぐるみを抱っこしたYちゃんをおんぶして保育をしているのですから、夏にカイロを背中に背負っているようなもの。M先生も大変ですがYちゃんもさぞかし暑いことでしょう。しかし、このような関わりを重ねることでぬいぐるみもブランケットも必要とせず過ごすことができるようになります。それまでの間、K君やYちゃん、M先生たちにはもう少し頑張ってもらいたいと思います。
2020年06月11日(木) No.2823 (園長日記)

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