保育日記

共存共栄

昨日の夕方、4歳児H組のSちゃんをお迎えに来たお母さんが玄関の上の方を指さし「園長先生、駐輪場の上の方に蜂が巣を作っていますよ！」と教えてくれました。毎朝掃除をしていながら全く気付かずにいましたが、Sちゃんのお母さんが教えて下さった指先の方を目を凝らし、よ～く見てみると、雨風を凌げる高さ5㍍ほどの庇のところに足長バチと思われる蜂が巣を作っているのが確認できました。本当はすぐにでも駆除すべきでしょうが、とは言っても子どもたちがいる時間、しかも薄暗くなってからハチの巣ハンターの仕事をするのは避けた方がいいと考え、今日子どもたちがお昼寝している時間に梯子を運び、殺虫剤と煤払い用の箒を準備し作業に取り掛かりました。梯子を昇り、巣をめがけてスプレーを噴射すると巣を守っていたたった一匹の蜂が苦しくなったようで、どこかへ飛んでいきます。その隙に巣を払い落とし、ものの数十秒で一件落着となったのですが、払い落とされた巣の中で動いている幼虫を見たとき、自分のしたことが本当にいいことなのか考えてしまいました。もちろん、子どもたちの安心・安全を守ることを考えれば危険な生き物は駆除すべきだと思いますが、どう考えても手の届くことのないところにできた巣。時には蛾などを捕食する益虫といった一面を持つ蜂と考えると、人間のエゴのように思え、何とか共存共栄できないものかと思ってしまいました。
　僕の好きな本の中に青山学院大学教授、福岡伸一先生（生物学者）の「動的平衡Ⅱ」という本があります。その中には人間をはじめ植物や昆虫といった生き物のことが書かれているのですが、アゲハ蝶などは、豊かな自然を巡って無益な争いが起きないように種ごとにすみ分けをしていて柑橘系の葉を食べる種、パセリやニンジンなどの食べる種と分かれているというのです。葉っぱは幼虫にとってサラダみたいなものでどれを食べても栄養価は変わらないはずなのに、幼虫は非常に禁欲的に自分の食べる葉を限定し、蝶もその葉にしか産卵しない。そして、葉を爪でひっかいて匂いや味を確かめた上で卵を産むというのです。しかし、同じ地球に住む人間は住み分け・棲み分けとは程遠く正反対のことばかりをしていて地球上から争いが絶えません。広辞苑で、住み分け・棲み分けを調べると、「生活様式が類似する動物の個体または個体群が種としては同じところに棲めるのに競争などの相互作用の結果、生活の場を空間的または時間的に分け合う状態で生存する現象」とあります。人間が自分たちの生活のために自然を破壊し生き物はもちろん、自分たちもが住みにくくなっていないことを願わずにはいられません。

2017年06月13日（火） No.2084 (園長日記)

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