Diary

地域の誇り


園庭の桜もケヤキも緑の葉を大きく広げ、子どもたちに日陰を与えてくれるようになり、そんな園庭から、プールで水遊びに興ずる子どもたちの歓声に混ざって時折蝉の鳴き声が聞こえてくるようになりました。その反対に、いつの間にか「ピー!」いう焼きも屋さんの音色が聞かれなくなったことに気付かされます。となると、今度は「わらび〜もち、冷た〜くて、おいし〜いよ!」とか「尾花沢のスイカ〜!」という物売りの声が響いてくることでしょう。僕が幼い頃は仙台の街中でも「金魚〜え〜、きんぎょ!」という(ドラマでしか聞いた(見た)ことのないような)金魚やさんや、チャルメラの音色と共にやってくる夜鳴きそば屋(屋台のラーメン屋)、鐘を鳴らしながらやってくる団子屋さん、リヤカーいっぱいに植木鉢に植えた盆栽を売りに来る植木屋さん!?座敷箒をたくさん担いで歩く箒屋さん、大きなな風呂敷に包んだ荷物を背負って沿岸部からやってくる行商のおばさんを見かけたものです。しかし、世の中がどんどん便利になっていくことで、そのような地域に根ざしていた文化があっという間になくなり、同じように地域にあった「八百屋」「魚屋」「肉屋」「酒屋」「本屋」「豆腐屋」「米屋」という小さな専門店までもが姿を消してしまっています。
 さて、そんな時代の変化の中、僕の家の近所に、県内で有名な自転車屋で買った自転車の修理でも嫌がらずにしてくれる、本当に小さな自転車屋(兄の同級生のお父さんが経営なさっている)や僕の同級生のお父さんが営んでいる昔ながらの小さな時計屋さんがあります。この時計屋さんこれまで何度となく新聞に取り上げられたことがあるお店なのですが、駅前のファッションビルにある時計屋やカメラ屋のはずなのに電気製品を始め、ありとあらゆるものを売っているカメラ屋で行ってもらう腕時計の電池交換の料金より500円以上安いのです(その自転車屋さんのパンク修理料金も他店よりやはり500円くらい安い)。しかも、混んでいないこともあり、行くとすぐに作業を始めてくれるため待ち時間が短く「作業が終わりましたらお呼びいたしますので、こちらの用紙にお名前や電話番号などをご記入いただきお待ちください」などという煩わしいことも一切ありません。それどころか、営業時間も10時からなどというのではなく、どちらのお店も朝7時頃には開店し、お店の掃除を始めるころや掃除の真っ最中に時計のオーバーホールや腕時計の電池交換のお客さん(僕もその中の一人)や自転車のパンク修理や依頼していたお客さんが依頼品を取りにやって来たりすると、掃除の手を休め、作業に取りかかってくれるのです。幼い時から見ていた、こんなマイスター(職人さん)たちがいつまでも作業をしてくれている町に住んでいることが誇りであり、これからもずっとお元気で、できるだけ長く仕事を続けて欲しいと願うばかりです。
2015年07月08日(水) No.1591 (園長日記)

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