Diary

あり地獄


一般的に“あり地獄”といえば、ウスバカゲロウの幼虫が風雨を避け、軒下等のさらさらした砂地にすり鉢のように作ったくぼみのことを言いますが、幼虫はそのすり鉢状の底に住み、迷い落ちてきたアリやダンゴムシ等の地上を歩く小動物を逃がすことなく巣の底に引きずり込み、大あごを使って巧みに捕まえ、その虫たちの液体を吸い取ってしまいます。そんな様子から、困ったことから脱け出せない苦しい状況のたとえに“あり地獄”が使われることもあります。
 ところで、保育園でのあり地獄は、そのような、すり鉢状の穴ではなく、園長である僕なのかも知れません。実は昨日のことです。薪にするために切った丸太から、驚くほどたくさんのアリが出てきたのです(虫が嫌いな方は悲鳴を上げそうなくらい)。彼らは誰にも迷惑を掛けることなく、暖かい春が来ることを待って丸太の中に作った巣の中で気持ちよく眠っていたのでしょうが、突如けたたましいチェーンソーの音がしたかと思ったら、道具を使うことなく、自分たちの歯を使い何年もかけて一生懸命に作った住宅があっという間に切り刻まれ、斧で粉々にされ、挙げ句の果てには知らないところに運ばれ、終いには暖炉の中へ放り込まれてしまうことになってしまったのです。子どもたちがこの時期に歌っている「ちいさいいのちが」という讃美歌があるのですが、その讃美歌の歌詞には、「♪〜虫もカエルもまっている、春が来るのを待っている、かみさま命を作られるハレルヤ、ハレルヤ!」と歌われているのですが、アリだけでなく、オーストラリアの原住民、アボリジニが喜びそうな大人の小指くらいの幼虫など、様々な虫の命を奪い取り、暖を取っている人間(園長)の勝手さを反省し、心の中で虫たちに「春を待っていたはずなのにごめんね」と謝りながら薪割りをしています。それにしても、あのアリの数、不気味な幼虫をみなさんにご覧頂けるように写真に残さなかったのが残念です。
2015年02月17日(火) No.1490 (園長日記)

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