Diary

飯舘村の犬たち


丁度一年ぶりに福島県南相馬市の保育園、そして、同市小高区の幼稚園、二本松、福島市の幼稚園などキリスト教保育連盟に加盟する園を訪ねて来ました。どの園でも子どもたちのために少しでも安全・安心な環境を取り戻すために、園庭の改良工事などの取り組みが一生懸命なされていました。その一方で、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、休園になったままの幼稚園は職員室の日めくりカレンダーも行事予定が書かれたボードも昨年どころか、震災が発生したあの日から何も変わることなく3月11日のままでした。そんな現実を目の当たりにしたあと、飯舘村を通り、中通りを目指したのですが、飯舘村のある場所で線量値を測るために車を止め車外に出ると、首輪はしているものの鎖に繋がれていない2頭の犬たちがどこからともなく「ワンワン」と吠えながら近づいて来るのです。新しく立派な家があるというのに、未だに帰宅困難地区なのか、犬たちの大きな鳴き声が響いても住人の姿はどこからも現れず、どこにでも自由に行ける犬たちは久しぶりに現れた人間に気付き、嬉しいのか、人恋しいのか、我々の方に近づいて来ようとするのです。ところが、尻尾は垂らしたままで、僕らが近づこうとすると逃げて行こうとするのです。こんな犬たちの姿を見ると人間だけでなく、多くの動物たちにも原発事故の影響があったことを思い知らされます。南相馬市の先生によると「飼い主たちは週に何度か犬たちに餌を与えに来ていると思います」とおっしゃっていましたが、原発事故がなければ飼い主と離ればなれになることなく、自然豊かな飯舘の地で過ごしていたでしょうし、我々が近づいても尻尾を垂らし、逃げて行こうとすることもなかったことでしょう。あの犬たちが人間不信に陥ることなく、一日でもはやく飼い主と共に過ごすことができるようになることを願うばかりです。明日は須賀川、鏡石、矢吹、いわきの加盟園を訪問する予定ですが、福島の今をしっかりと目に焼き付け、実態を多くの方々に伝えられるようにしたいと思います。
2014年08月07日(木) No.1359 (園長日記)

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