Diary

不老長寿の薬


「幼稚園や保育園の先生はいつまでたっても若い」と言われることがありますが、その一因は子どもと生活する上で必要な子どもを理解するための柔軟な感覚を失わない、失っていないということだと思います。大人にしてみれば特別ではない園庭落ちているにキラキラ光る小さな石を見つけて「これママにおみやげにする」とダイヤモンドを見つけたかのように大切にポケットに入れて持ち帰ったり、帰る頃には萎れてしまうであろう小さな花を大切そうに摘む姿など、そのような行動や感情や感覚に違和感を覚えることなく、子どもたちと同じ感覚・感情を持ち続けていられる先生たちが年を取るはずなどないのでしょう。例えば、今日はこんなことがありました。園庭中央の大きなケヤキの根元で5歳児N組の子どもたちと担任のM先生が座り込み何やら夢中になって遊んでいるのです。ぼくは「そうか、今日は根元の土を集めて泥だんごを作っているな」と思って見ていたのですが、3歳児T組のH君にはきれいに並べられた泥だんごがジャガイモに見えたらしく「えんちょうせんせいジャガイモだよ」と言うではありませんか。そこでH君の言葉を借りてN組の子どもたちのところに行き「いっぱいジャガイモ作って八百屋さんでもはじめるの?」とわざと話し掛けると「ちがう!おだんごつくってるの!!!」と予想通りの答えが返ってきました。小さな石がダイヤモンドになり、野の花が花束になり、泥がだんごになる子どもたちの世界、なんて素敵なのでしょう。そんな子どもたちは先生たちにとって“不老長寿の薬”と言えるように思えます。
 さて、そんな子どもたちが通う保育所(園)に関する大きなニュースが今朝の新聞に出ていました。それは、政府が、子ども子育て会議の基準検討部会を開き、2014年度から始まる「小規模保育」の認可基準をまとめ、認可保育所(園児の定員20名以上)では全職員に必要とされる保育士資格について、小規模保育(6〜19人)では「半数以上」に緩和して参入を促がしていく。というのです。要するに保育士の半数が無資格者であっても保育をすることができるということになります。6年前に保育所保育指針が大幅に改定された際、保育の質というものが大切にされたはずです。そして、有資格者である保育士でも子どもと関わるのはとても難しいのに、無資格者が保育をして保育の質が向上すると思っているのでしょうか?不老長寿の薬である子どもたちの将来が未来永劫幸せであるためには、この基準には断固反対と言いたいものです。さもなければ小規模保育に限らずなし崩しで制度が変わることもありえる国なのですから…。
2013年08月30日(金) No.1110 (園長日記)

No. PASS