Diary

失ってはならないこと!


昨日のことです。週二回保育園のゴミを捨てるために軽トラックをお借りする社会福祉協議会から「町内のSさんが保育園の子ども達のために作ったペットボトルカバーを届けて下さったので貰って頂けませんか?」という電話が入りました。思えば数ヶ月前のまだ暑い日、大河原駅の近くにお住まいで御歳90数歳のSさんが「子ども達にペットボトルのカバーを作ってあげたいのだけれど子ども達は何人いますか?」と保育園を尋ねて下さったことがあったことを思い出しました。その時には「目も見えにくくなったし、子どもの人数分作る事は難しいけれどねえ」とおっしゃっていたのに何と子ども達の分プラス職員分、そして、我々の園以外にも数百お作りになったとお聞きしただただ驚くばかり。そんな好意を無にするはずはなく「勿論頂きます!明日にでも取りに伺います」と電話を切りました。そして、約束通り今日の午前中プレゼントを取りに行くことにしました。
 せっかくですので一人で行くのはもったいないと思い1歳児クラスのS君とHちゃんを誘い散歩をしながら社協に出掛けました。すると社協までの道すがら擦れ違う方や反対側の歩道を歩いているおばあさんが「あら!めんこ(ご)いこと!」と声を掛けてくれるのです。このところ職員室での仕事に追われている僕にとってこの時間は正にリフレッシュできる貴重な時間となりました。そして保育に携わる者として子ども達との時間はどんなに忙しくても失ってはいけない事だと再確認した次第です。しかし、それ以上に失ってはならないこと、それは子ども達のために一針一針ペットボトルカバーを編んで下さったSさんの気持ちです。
 現代は100円あれば何でも買う事が出来るお店ができ、編物は勿論、面倒なことなどすることは無駄なこと、安いのだから壊れれば捨ててまた買えばいいという風潮が広がり、昔の日本人やドイツ人のように物を直しながら大切に使うということはなくなってしまった気がします。同時に核家族化が進み子どもとお年寄りが一緒に生活する事もなくなり、よき伝統や文化が伝わり難くなったように思います。
今日頂いたSさん手作りのペットボトルカバーを見た時、Sさんが数ヶ月かけてカバーを編む姿が思い浮かび涙がこぼれそうになりました。また、昔よく歌われた童謡♪“かあさんの歌”が浮かびました。今ではこの歌の歌詞のような生活も失われてしまったことに悲しさを覚えました。
 耳も遠くなり目も見え難くなったとおっしゃるSさんの好意には全然足りないかも知れませんが、今度は我々がSさんの所に出掛け、お礼のお手紙と一緒に子ども達の歌声を届けに行って来たいと思います。Sさん本当にありがとうございました。心から感謝致します。

「かあさんの歌」窪田聡 作詞・作曲

 母さんが夜なべをして 手袋編んでくれた
  木枯らし吹いちゃ 冷たかろうて せっせと編んだだよ
   故郷の便りは届く 囲炉裏の匂いがした

 母さんは麻糸紡ぐ 一日紡ぐ
  おとうは土間で 藁打ち仕事 おまえも頑張れよ
   故郷の冬は寂しい せめてラジオ聴かせたい

 母さんのあかぎれ痛い なま味噌を擦り込む
  根雪も融けりゃ もすぐ春だで 畑が待ってるよ
   小川のせせらぎが聞こえる 懐かしさがしみとおる

2012年01月18日(水) No.596 (園長日記)

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